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山陽新聞「再建社殿に神宝奉納」

 備前国総社宮(岡山市中区祇園)の社殿に、伊勢神宮(三重県伊勢市)から譲り受けた「神宝」が奉納された。総社宮は24年前の放火で焼失し再建。宝物は、当時の宮司で昨年末に死去した武部聡明さんが新しい社殿の完成を祝う品として待ち望んでいた。長男の禰宜・一宏さん(43)は「父は自分の代で社殿を失ったことに大きな責任を感じていた。生きていれば宝物をどんなに喜んだか。後世に引き継ぎたい」と誓う。(民直弘)

 

 平安後期の創建と伝わる総社宮は江戸期に一度焼失。再建されたが1992年に放火に遭い全焼した。

 その際の建設に尽力したのが73歳で死去した聡明さんだ。創建時の建築様式での再建を願い、文化財建築に詳しい三浦正幸広島大大学院教授(文化財学)に設計を依頼。氏子や地域住民でつくる復興奉賛会が資金を募り2010年に正殿、15年春に拝殿が完成した。

 20年に1度社殿を立て替え、奉納する宝物なども新調して神様に引っ越してもらう伊勢神宮の式年遷宮に伴って、全国の神社に譲渡される神宝を総社宮に納めたいと、聡明さんが昨年夏申請していた。同12月に亡くなる直前、譲渡の内示を受け、一宏さんが病床の聡明さんに伝えると笑顔を見せたという。

 今年2月に神宝として譲渡される「楯 (たて)」と矢を入れる「靭 (ゆぎ)」を伊勢神宮に取りに行き。総社宮に納めた。

 聡明さんの思いがこもった社殿と神宝。平安後期の様式の社殿は全国的にも貴重とされ、「将来、文化財になり得る神社。建築の再建に懸けた宮司の冥福を祈りたい」と三浦教授。4月下旬に神宝奉納の神事を終えた一宏さんは「地域住民が集い、心のよりどころとなる神社にしたい」と話している。

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