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山陽新聞『一日一題』2月9日

『空白の23年』

 

 備前国総社宮は平成4(1992)年、随神門以外の社殿が火事で全焼しました。先代宮司の父が消火中に飛び込み、なんとかご神体だけはお守りできたのは不幸中の幸いでしたが、それから拝殿再建まで23年もかかりました。

 その間はお社がなく、年中の祭事を行うのも大変で、氏子総代の方々にご奉仕いただき、その都度テントを立てて祭典を執り行ってきました。寒さの厳しい正月三が日には、テントを紅白幕で囲い、石油ストーブをたいて何とかしのいできましたが、そんな苦労をよそに参拝される方は日に日に少なくなりました。それはそうでしょう、お社の無い神社にお参りしても、何となくご利益を頂ける気はしないですものね。十年一昔と言いますが、23年なのでふた昔もその状態でしたから、私がご奉仕させていただきだしたころは、ひと月に両手で数えられるほどのご参拝しかなく、頭を悩ませました。

そこで私は一つ目標を立てました。それは一日に必ずご参拝いただいた方とお話をするということでした。最初はご参拝の方がいないので道を通る人に声を掛け、けげんそうな顔をされたこともありましたが、だんだん私の顔を覚えてくださるようになり、声を掛けてくださる方も出てきました。

 そして平成27(2015)年4月29日、晴れて拝殿が完成し、地域の方々をはじめ、友人や同級生たちの協力のもと竣工祭を執り行いました。社殿の耐用年数が500年であることから、500年に一度のお祭りと銘打ち、全国の神社で初のプロジェクションマッピングを放映し、3千人以上のご参拝いただく盛大な祭りになりました。あの感動は今も忘れられません。そこで関わってくださった方々は一生の宝と思っています。

 あの23年は空白ではなく、これから備前国総社宮が何百年も何千年もそこにあり続けるための大切な充電期間だったのかもしれませんね。 

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